昨年12月、親戚から「鬼滅の刃」全巻を借りました。
昨年、とにかく話題だった鬼滅ですが、コミックスもアニメも見ていなかったので、「鬼退治の話である」という、ざっくりした知識しかありませんでした。70代後半である義母ですら、「禰󠄀豆子がかわいい」と言って、しばらくアニメを見ていたくらいなのに。
流行物だし、一度は読んでおこうかなという興味半分、私が苦手な戦闘シーンが多いという噂を聞いていたのでためらい半分。
でも結局、親戚からの「とりあえず読んでみたら? あかんかったら、すぐ返してくれたらええし」という言葉に背中を押される形で、借りることにしました。
お正月から少しずつ読み進め、噂通り、戦闘シーンがてんこ盛りでしたが、何とか読破。
その後、もう1度全巻読み返し、概ねではありますが、内容が理解できました。
絵のタッチに、昭和の香りがした
昭和世代の漫画を読んでいた私は、現在主流の絵柄になかなかなじめません。どんなにストーリーが素晴らしくても、絵柄が自分の好みでなければ、読む意欲がわきません。
でも鬼滅は、特に炭治郎と禰󠄀豆子というメインキャラクターの絵のタッチが、私の好みに近かった。
「鬼滅の刃」の絵の雰囲気から、若い頃に慣れ親しんだ昭和時代の漫画の香りがしたことが、最後まで読み切れた原因のひとつだと思います。
名称が難しすぎる。
主人公の竈門炭治郎と禰󠄀豆子だけでなく、他のキャラの名前も全て難しいので、覚えるのに一苦労でした。コミックス冒頭に記載されている、人物紹介ページに、何度行きつ戻りつしたことか。
呼吸とか術の名前の完全把握は、諦めました。
ちなみに、既に亡くなった私の親戚の中に、伊之助さんという人がいたから、猪突猛進イノシシ頭野郎は、すぐに覚えたなあ。
登場人物が多すぎる。
メインキャラクター以外にも、ちょっとだけ出演の脇役みたいな人も、いっぱい登場します。かなり時間をおいて突然再登場する人もいるので、もう誰が誰だかわからなくなる。
でも、特に出さなくてもよかったというキャラは、いなかったように思います。
再読したのは、メインキャラクターの再確認という理由以上に、この「ちょっとだけ出演の脇役たち」が、いつどこで最初に登場したのか把握するためでもありました。
アニメの方がわかりやすいかも。
戦闘シーンになると、どうしても絵がごちゃごちゃしてくるので、誰と誰が闘っているのか、どっちが優勢なのか、結局どっちが勝ったのか、だんだんわからなくなってきます。
映像作品は未見ですが、まさにアニメ向きの漫画だと思いました。戦闘シーンもわかりやすくなるし、炭治郎・伊之助・善逸のドタバタや、禰󠄀豆子のかわいい仕草など、動けばより魅力的になるでしょうから。
アニメから入り、コミックスでさらに深掘りするという流れの方が、よりわかりやすく楽しめるかもしれません。
作品への愛情とこだわり
コミックスのあちこちに、作者の吾峠呼世晴さんの感謝の言葉が、ワニのイラストとともに綴られているのも、楽しさのひとつ。
特に初期の巻では、腰が低いというのを通り越し、失敗して落ち込んだり、謝罪したりと、ややネガティブな言葉が散見されます。読んでいると、吾峠さんが「すんません、すんません」と、ペコペコ頭を下げまくっている映像が浮かんでくるようで、ちょっと笑ってしまいました。
話と話との間には、キャラクターたちのラフカットや、「中高一貫☆キメツ学園」という設定で、キャラクターたちをモチーフとしたカットや設定も描かれています。
個人的には、文通相手がどんどん増えて、せっせとお手紙を書いている炭治郎の絵がかわいいと思いました。
また、作品に反映しきれなかった裏設定なども、ぎっちり書かれています。
メインキャラクターに影響を及ぼしたけれど、作品内には登場しないキャラクターにまで目配りされていて、裏設定の説明だけで、複数ページ費やしている箇所もあるほど。
コミックスには、吾峠さんの様々なこだわりが詰め込まれていて、いろいろな楽しみ方ができます。
そして「鬼滅の刃」という作品に対する、吾峠さんの並々ならぬ思い入れもうかがえます。
大正時代を選んだ審美眼のすばらしさ
鬼殺隊のメンバーたちの入隊理由はもちろんですが、元々人間だった鬼たちが、なぜ鬼になったのかという理由まで、丁寧に描かれています。この理由付けのために、時代背景を大正時代にしたのではないかとも思います。
大正時代というのは、明治や昭和の時代とは違う、日本独特のモダンな文化が花開いた時代。でもその一方で、作品中でも子供の身売りが描かれていましたが、貧乏からくる悲劇もたくさんあった。
15年という短期間で終わり、ちょっとミステリアスなイメージが漂う時代でもあります。
明治でも昭和でもなく、大正時代を選んだ吾峠さんの審美眼が素晴らしいと思いました。
スピンオフ
最終巻には、主要キャラクターの子孫たちの様子が描かれているのですが、他にもスピンオフ企画がいっぱい立てられるんじゃないかなあ。
原作の雰囲気を壊さない程度にとどめれば、さらに鬼滅の世界観が広がると思う。
個人的には、禰󠄀豆子にベタ惚れの善逸が、その後彼女にどうアタックしていくか、見てみたいなあ。
猪突猛進のイノシシ頭野郎(伊之助)の行く末も気になる。
完結への勇気
先にも書きましたが、作者の頭の中には、キャラクターたちの細かな設定がありました。それらを全て作品に盛り込めば、もっと連載を続けることができたはずなのに、完結させた。
勇気があるし、潔いなあと思います。
読み応えがあり、キャラクターたちが紡ぎ出す言葉も印象的で、ハマる人が多くいるのも頷けます。
最後の最後までハラハラさせられましたが、幸せにつながる結末でよかった。
さあ、2ヶ月ほど借りっぱなしなので、そろそろ本を返却しないと。
ちなみに。
鬼滅の刃を読み進めるうちに思い出したのが、私が大好きな漫画「ピグマリオ」。
「スケバン刑事」作者である和田慎二さんの作品で、母親を石にされたクルト少年が、宿敵メデューサを倒すために旅する物語です。
設定などは全く違うのですが、何か同じようなマインドが流れているような感じがするのです。
もう何十年も前の作品なので、見つけるのは大変だと思いますが、機会があれば是非。
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