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2004年から2009年まで更新していたブログ「今週のすぎやん」の内容を抜粋・修正し、ブログには書ききれなかった作者の思いや後日談なども新たに書き下ろしたエッセイ。

「鬼滅の刃」全巻読破しました。

市松模様 レビュー
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昨年12月、親戚から「鬼滅の刃」全巻を借りました。

昨年、とにかく話題だった鬼滅ですが、コミックスもアニメも見ていなかったので、「鬼退治の話である」という、ざっくりした知識しかありませんでした。70代後半である義母ですら、「禰󠄀豆子がかわいい」と言って、しばらくアニメを見ていたくらいなのに。

流行物だし、一度は読んでおこうかなという興味半分、私が苦手な戦闘シーンが多いという噂を聞いていたのでためらい半分。
でも結局、親戚からの「とりあえず読んでみたら? あかんかったら、すぐ返してくれたらええし」という言葉に背中を押される形で、借りることにしました。

お正月から少しずつ読み進め、噂通り、戦闘シーンがてんこ盛りでしたが、何とか読破。
その後、もう1度全巻読み返し、概ねではありますが、内容が理解できました。

絵のタッチに、昭和の香りがした

昭和世代の漫画を読んでいた私は、現在主流の絵柄になかなかなじめません。どんなにストーリーが素晴らしくても、絵柄が自分の好みでなければ、読む意欲がわきません。
でも鬼滅は、特に炭治郎と禰󠄀豆子というメインキャラクターの絵のタッチが、私の好みに近かった。

「鬼滅の刃」の絵の雰囲気から、若い頃に慣れ親しんだ昭和時代の漫画の香りがしたことが、最後まで読み切れた原因のひとつだと思います。

名称が難しすぎる。

主人公の竈門炭治郎と禰󠄀豆子だけでなく、他のキャラの名前も全て難しいので、覚えるのに一苦労でした。コミックス冒頭に記載されている、人物紹介ページに、何度行きつ戻りつしたことか。
呼吸とか術の名前の完全把握は、諦めました。

ちなみに、既に亡くなった私の親戚の中に、伊之助さんという人がいたから、猪突猛進イノシシ頭野郎は、すぐに覚えたなあ。

登場人物が多すぎる。

メインキャラクター以外にも、ちょっとだけ出演の脇役みたいな人も、いっぱい登場します。かなり時間をおいて突然再登場する人もいるので、もう誰が誰だかわからなくなる。
でも、特に出さなくてもよかったというキャラは、いなかったように思います。

再読したのは、メインキャラクターの再確認という理由以上に、この「ちょっとだけ出演の脇役たち」が、いつどこで最初に登場したのか把握するためでもありました。

アニメの方がわかりやすいかも。

戦闘シーンになると、どうしても絵がごちゃごちゃしてくるので、誰と誰が闘っているのか、どっちが優勢なのか、結局どっちが勝ったのか、だんだんわからなくなってきます。

映像作品は未見ですが、まさにアニメ向きの漫画だと思いました。戦闘シーンもわかりやすくなるし、炭治郎・伊之助・善逸のドタバタや、禰󠄀豆子のかわいい仕草など、動けばより魅力的になるでしょうから。

アニメから入り、コミックスでさらに深掘りするという流れの方が、よりわかりやすく楽しめるかもしれません。

作品への愛情とこだわり

コミックスのあちこちに、作者の吾峠呼世晴さんの感謝の言葉が、ワニのイラストとともに綴られているのも、楽しさのひとつ。
特に初期の巻では、腰が低いというのを通り越し、失敗して落ち込んだり、謝罪したりと、ややネガティブな言葉が散見されます。読んでいると、吾峠さんが「すんません、すんません」と、ペコペコ頭を下げまくっている映像が浮かんでくるようで、ちょっと笑ってしまいました。

話と話との間には、キャラクターたちのラフカットや、「中高一貫☆キメツ学園」という設定で、キャラクターたちをモチーフとしたカットや設定も描かれています。
個人的には、文通相手がどんどん増えて、せっせとお手紙を書いている炭治郎の絵がかわいいと思いました。

また、作品に反映しきれなかった裏設定なども、ぎっちり書かれています。
メインキャラクターに影響を及ぼしたけれど、作品内には登場しないキャラクターにまで目配りされていて、裏設定の説明だけで、複数ページ費やしている箇所もあるほど。

コミックスには、吾峠さんの様々なこだわりが詰め込まれていて、いろいろな楽しみ方ができます。
そして「鬼滅の刃」という作品に対する、吾峠さんの並々ならぬ思い入れもうかがえます。

大正時代を選んだ審美眼のすばらしさ

鬼殺隊のメンバーたちの入隊理由はもちろんですが、元々人間だった鬼たちが、なぜ鬼になったのかという理由まで、丁寧に描かれています。この理由付けのために、時代背景を大正時代にしたのではないかとも思います。

大正時代というのは、明治や昭和の時代とは違う、日本独特のモダンな文化が花開いた時代。でもその一方で、作品中でも子供の身売りが描かれていましたが、貧乏からくる悲劇もたくさんあった。
15年という短期間で終わり、ちょっとミステリアスなイメージが漂う時代でもあります。

明治でも昭和でもなく、大正時代を選んだ吾峠さんの審美眼が素晴らしいと思いました。

スピンオフ

最終巻には、主要キャラクターの子孫たちの様子が描かれているのですが、他にもスピンオフ企画がいっぱい立てられるんじゃないかなあ。
原作の雰囲気を壊さない程度にとどめれば、さらに鬼滅の世界観が広がると思う。

個人的には、禰󠄀豆子にベタ惚れの善逸が、その後彼女にどうアタックしていくか、見てみたいなあ。
猪突猛進のイノシシ頭野郎(伊之助)の行く末も気になる。

完結への勇気

先にも書きましたが、作者の頭の中には、キャラクターたちの細かな設定がありました。それらを全て作品に盛り込めば、もっと連載を続けることができたはずなのに、完結させた。
勇気があるし、潔いなあと思います。

読み応えがあり、キャラクターたちが紡ぎ出す言葉も印象的で、ハマる人が多くいるのも頷けます。
最後の最後までハラハラさせられましたが、幸せにつながる結末でよかった。

さあ、2ヶ月ほど借りっぱなしなので、そろそろ本を返却しないと。

ちなみに。

鬼滅の刃を読み進めるうちに思い出したのが、私が大好きな漫画「ピグマリオ」。
「スケバン刑事」作者である和田慎二さんの作品で、母親を石にされたクルト少年が、宿敵メデューサを倒すために旅する物語です。

設定などは全く違うのですが、何か同じようなマインドが流れているような感じがするのです。
もう何十年も前の作品なので、見つけるのは大変だと思いますが、機会があれば是非。

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