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2004年から2009年まで更新していたブログ「今週のすぎやん」の内容を抜粋・修正し、ブログには書ききれなかった作者の思いや後日談なども新たに書き下ろしたエッセイ。

動けるうちに。

女子会 近況報告
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先日、友だち(A子ちゃん)と、大阪市内で久々に晩御飯を一緒に食べました。
同い年のA子ちゃんとは、最初に勤務した会社に同期入社して以来の付き合いです。

彼女は20代で結婚し、共働きで2人の男の子を育て上げたお母ちゃん。今年、子どもたちが相次いで家から巣立ち、やっと子育てが一段落したところです。
夫婦ふたりの生活に戻った最初の夜は、ピザを取って2人で食べたと言ってました。

A子ちゃんが出産後は、会うのは多くても年に1~2度。数年会わなかった時期もありました。子どもたちが大きくなってからも、外食はもっぱらランチで、夕方には解散。
夕方に待ち合わせて、食事しながら夜遅くまで喋り倒したのは、本当に久しぶりのことです。

「ご飯を炊く量も、洗濯物の量も減って、楽になったわ」
「(子どもが出て行って)もうちょっと寂しく思うかなって思ってたけど、全然そんなことないわ。空の巣症候群なんて、縁がなかったわ」

近況を含め、あれこれ話しましたが、今の彼女が一番やりたいことのひとつが、旅行。

A子ちゃんとはかつて、北海道や東京、鎌倉など、何度か旅しました。彼女が綿密なプランを立て、手続きやら何やら一切合切してくれて、旅行中の私は、ツアコン係の彼女の後についていく、というのが毎回のパターン。
彼女の子どもたちも含めた4人で旅行したこともあります。

「元気なうちに、動けるうちに、行けるうちに行っとかなあかん。来年あたり行こな」

そう何度も言いつつ、楽しそうに私を熱心に誘ってくる彼女を見て、何かしみじみ思ったのです。
彼女は子育て中に、諦めたくはないけど、諦めざるを得なかったことが、本当にたくさんあったんだろうなって。

もちろん彼女は、結婚・出産を後悔したり嫌がったりしていたわけでは、決してありません。愚痴を言いつつも、ご主人と協力しつつ、子どもたちを大事に愛情深く育てていたし、子どもたちも母親のことを信頼し、とてもよい親子関係を築いていました。
現在を大切に生きる彼女の生き方には、太い芯が通っていて、全くブレがありません。

でも、やっぱり、しんどかった時もあったと思います。子育てって、自分の思い通りにならないことの連続だから。他にも妥協しなきゃいけないこともあっただろうし。
まっすぐな人だから、納得できないことも多かったと思う。

そんな時期を乗り越え、子育てが一段落し、ちょっと身軽になったA子ちゃんには、これまで諦めざるを得なかった様々なことが、やっと今からできる!という、明るい希望がある。でも気が付けば、私達も今年還暦。思い通りに動ける時間は限られている。
だから、「動けるうちに」という言葉を、何度も口にするんだろうな。

私はといえば、生きていくうえで一番大事なことは、何でもない穏やかな日々が続くこと。
「動けるうちに旅行」という欲は、それほど強くありません。
これまでずっと、自分の欲より、その時その時に吹く風の流れみたいなものに乗っかって生きてきた私は、動けなくなったらその時はその時か、って今は思ってるのです。まあ、実際に動けなくなったら、抗ったり後悔したりするかもしれませんが。

A子ちゃんのように、人生のステージが変わっても、自分の気持ちに素直に従い、過ぎたことにこだわらず、現在をしなやかに生きる人を見ると、本当にうらやましく思います。「動けるうちに旅行に行きたい」というのは、今の彼女が抱く自然な欲望ですもん。
どっちかというとネガティブで、「あきらめ」が自我の根底にある私には、こういう生き方がなかなかできません。

若い頃にもぼんやりと感じていたことだけど、職場が変わっても、結婚しても、A子ちゃんはこんな私と、なぜ変わらずつながり続けてくれているんだろうな。
彼女には感謝の気持ちでいっぱいですが、本当に不思議です。

とりあえず、来年は、彼女の希望で伊豆方面に行くことになりそうです。

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