今からもう20年ほど前のことです。
当時、地元のフリーペーパーに広告を掲載していたのですが、それを見た外国人女性からお電話をいただきました。
依頼内容は、パソコンのセットアップ。
パソコンやプリンターを購入したが、箱から出したままで、1回も電源を入れていない。
「いんてるねっと(インターネットのこと)」を使いたい。
たどたどしい日本語ではありましたが、依頼内容は十分理解できました。
でももっと詳しいことは、訪問して実物を見ないとわかりません。
今も昔も、こういった業務は私の範疇外にしています。もちろん広告にも、営業種目として挙げていませんでした。
しかし、本当に困った様子の外国人の方からのご連絡だったこと、それより何より、その女性への好奇心がわき、お断りできなかった。
ひとりでは心許ないので、パソコンに詳しい知人をとっつかまえ、事情を説明し、お客様のご自宅まで同行してもらうことにしました。
「歩いて1分、かからない」という彼女の言葉通り、ご自宅は、駅前のセキュリティ付き豪華新築マンション。
実は私、彼女の顔を見るまで、日本に働きに来ている東南アジア系の方だと、心の中で勝手に思い込んでいたのです。
でも、私達を出迎えてくれた女性は、明らかにヨーロッパ系の若い白人女性だったので、心の中で勝手にびっくり。
件のパソコンは、外資系メーカーの通販モデルで、当時最先端のテレビが映るパソコン。3カ国語くらい併記してあるものの、あまりに整合性がなくてわかりにくく、初心者には絶対読みこなせない取説を見て、頭がクラクラしました。
私では到底太刀打ちできないと判断、知人に作業を丸投げすることに。
知人が必死で作業する傍らで、私は少しだけ彼女に質問。
「お国はどちらなんですか」
「ウクライナ」
「ひぇ~、遠いところから来られたんですね~。もう何年になるんですか」
「2年くらい」
一通りの電化製品はすべて揃っているものの、家具があまりないので、ひとりぐらしのように見えましたが、日本人のパートナーがいることは、表札でわかりました。パソコンの箱に貼ってあった運送便の送り状の宛名も、その表札に掲げられていた男性名でした。
夜に働いているとおっしゃってましたが、どういう事情で来日し、どんなお仕事をされているのかなど、他にも聞きたいことは山ほどありました。
だけど、聞けませんでした。
知人のおかげで、何とかセットアップは完了、既にネット環境は整っていたので、インターネットもできるようになりました。
それ以降、彼女から電話がかかってくることはありませんでした。
先日、ロシアとウクライナの戦闘が3年目に入ったというニュースを見て、なぜかふと、この時の出来事を思い出しました。
彼女、元気にしてるかな。
彼女ゆかりの故郷の人たちは、無事でお過ごしかな。
何とか早く、戦闘が終わればよいのだけれど。
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