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2004年から2009年まで更新していたブログ「今週のすぎやん」の内容を抜粋・修正し、ブログには書ききれなかった作者の思いや後日談なども新たに書き下ろしたエッセイ。

思い出したこと。

ウクライナ 仕事
記事内に広告が含まれています。

今からもう20年ほど前のことです。

当時、地元のフリーペーパーに広告を掲載していたのですが、それを見た外国人女性からお電話をいただきました。
依頼内容は、パソコンのセットアップ。

パソコンやプリンターを購入したが、箱から出したままで、1回も電源を入れていない。
「いんてるねっと(インターネットのこと)」を使いたい。

たどたどしい日本語ではありましたが、依頼内容は十分理解できました。
でももっと詳しいことは、訪問して実物を見ないとわかりません。

今も昔も、こういった業務は私の範疇外にしています。もちろん広告にも、営業種目として挙げていませんでした。
しかし、本当に困った様子の外国人の方からのご連絡だったこと、それより何より、その女性への好奇心がわき、お断りできなかった。

ひとりでは心許ないので、パソコンに詳しい知人をとっつかまえ、事情を説明し、お客様のご自宅まで同行してもらうことにしました。
「歩いて1分、かからない」という彼女の言葉通り、ご自宅は、駅前のセキュリティ付き豪華新築マンション。

実は私、彼女の顔を見るまで、日本に働きに来ている東南アジア系の方だと、心の中で勝手に思い込んでいたのです。
でも、私達を出迎えてくれた女性は、明らかにヨーロッパ系の若い白人女性だったので、心の中で勝手にびっくり。

件のパソコンは、外資系メーカーの通販モデルで、当時最先端のテレビが映るパソコン。3カ国語くらい併記してあるものの、あまりに整合性がなくてわかりにくく、初心者には絶対読みこなせない取説を見て、頭がクラクラしました。

私では到底太刀打ちできないと判断、知人に作業を丸投げすることに。
知人が必死で作業する傍らで、私は少しだけ彼女に質問。

「お国はどちらなんですか」
「ウクライナ」
「ひぇ~、遠いところから来られたんですね~。もう何年になるんですか」
「2年くらい」

一通りの電化製品はすべて揃っているものの、家具があまりないので、ひとりぐらしのように見えましたが、日本人のパートナーがいることは、表札でわかりました。パソコンの箱に貼ってあった運送便の送り状の宛名も、その表札に掲げられていた男性名でした。

夜に働いているとおっしゃってましたが、どういう事情で来日し、どんなお仕事をされているのかなど、他にも聞きたいことは山ほどありました。
だけど、聞けませんでした。

知人のおかげで、何とかセットアップは完了、既にネット環境は整っていたので、インターネットもできるようになりました。
それ以降、彼女から電話がかかってくることはありませんでした。

先日、ロシアとウクライナの戦闘が3年目に入ったというニュースを見て、なぜかふと、この時の出来事を思い出しました。

彼女、元気にしてるかな。
彼女ゆかりの故郷の人たちは、無事でお過ごしかな。

何とか早く、戦闘が終わればよいのだけれど。

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