発生源はどこだ。
8月に入った頃だったでしょうか。
体長数ミリの黒い虫の存在に、最初に気付いたのは、私です。
トイレの床をヨタヨタ歩いているのを、指でつまんで捕獲。
だけど、逃げようともしないし、指と指でちょっと押さえるだけで絶命してしまう、なんとも儚い虫です。
ちっちゃい虫だし、私達に危害を加えるわけでもない。
たまたまどこかからひょっこり入ってきたのだろうと、最初は気にも留めませんでした。
しかし、少しずつですが、確実に数が増えていきます。
当初はトイレで見かけることが多かったのですが、そのうち家中の床で目にするようになりました。
「なんで最近、こんなに虫がいるんだろう」と、私が毎日つぶやいたからか、ダンナも虫の存在を認識。
常に下を向いて歩くようになった夫婦。
正体を知る為、Googleレンズで検索したのですが、私が撮影した虫の写真の出来が良くないからか、いろいろな虫が候補に挙がってきて、特定できません。
そうこうしているうちに、私だけで、1日に10匹以上捕獲するようになりました。
こんなに室内で虫を見るなんて、明らかに変です。
そして、今度はダンナがGoogleレンズで調査。
「これ、コクゾウムシやで。たぶん」
コクゾウムシ。
私が最後に見たのは、もう数十年前のことです。
まだ私の両親が存命だった頃、我が家ではハイザーにお米を保管してました。
しかし、このハイザー内によく発生したのが、コクゾウムシ。虫たちに食べられてしまった、おいしくないお米を食べる機会が、昔はよくあったのです。
ハイザー処分後は、冷蔵庫で保管するようになったため、コクゾウムシを目にすることはなくなりました。
数十年の時を経て、再び降臨したコクゾウムシ。
発生源は、どこだ。
大量発生現場、特定。
ダンナの両親の故郷では、米作りをしています。
毎年新米の季節になると、両親宅には、30キロ入りの玄米入り米袋が入ったダンボール箱が数箱届きます。
私達夫婦は、届いた玄米を1箱持ち帰り、なくなったらまた1箱持ち帰る、という風にしてます。
精米は10キロ単位で行い、ペットボトルに入れて冷蔵庫に保管、残りの玄米は、玄関の空きスペースで保管しています。
風通しはいまいちですが、たぶん家中で一番温度が安定している場所だからです。
玄米は複数の親戚から届きますが、足りない分は、別途入手しなければなりません。
現在保管中なのは、ふるさと納税の返礼品として頂いた玄米。
10キロは冷蔵庫に保管しているので、玄関に置いているのは20キロ。
念のため確認しましたが、パスタなどの穀物系の食品には、虫は付着していません。
「やっぱり、米か・・・な・・・」
8月も後半にさしかかったある日、ダンナは意を決して、ダンボール箱から米袋を取り出し、袋の口を開けました。
二人で中をのぞき込み、絶句。
しばらく、「うわあ・・・」という声しか出ませんでした。
中には、袋の出口に向かってよじ登ってくるチャレンジャーたちもいます。
箱の外に出た虫たちは、あちこちさまよい、仲間たちの元に戻れなくなり、我々の目に留まって処分される、という運命を辿っていたのだと思われます。
表面だけでこれだけの虫がいるのだから、中には相当数繁殖していて、米の中は食い尽くされてボロボロでしょう。
ベランダで玄米を天日干しし、虫を追い出すという手もありますが、私達はマンション住まい。隣近所に虫が移動し、ご迷惑がかかる可能性もある。
「捨てるしかないか・・・」
食べ物を捨てることが大嫌いなダンナ、本当に辛そうな表情をしていました。
ちょうど翌日が、ゴミ回収日。
20キロを一度に集積場まで運搬するのは大変だし、収集員の方にもご迷惑なので、3枚くらい重ねたゴミ袋に、10キロずつ米を入れ、袋と袋の間には新聞紙をはさみ、袋の中には殺虫剤を噴霧し、虫が這い出てこないよう、しっかり縛りました。
私達がむせるほどの量の殺虫剤を噴霧したのに、できあがった2つの袋からは、虫たちが動く「カサカサ」っていう音が、ずっと聞こえてました。
翌日くらいまでは、残党を見かけましたが、それ以後は消え失せ、コクゾウムシ騒動は一件落着。
それにしても、今までこんなことはなかったのに、なぜ今年に限って、コクゾウムシが大量発生したのか。
原因について夫婦で話し合いましたが、やはり今年の猛暑の影響ではないかと。
玄関付近の温度は、リビングなどに比べると低いですが、それでも例年よりは高い。
さらに、お米を保管してるスペースには、人感センサーで点灯する足下照明があります。数分で自動消灯するものの、この照明が、卵のふ化をアシストしたのかもしれません。
玄米には、既にコクゾウムシの卵が産み付けられていたのでしょう。
繁殖に適した温度にならなければ、卵はふ化しません。だけど今年は、コクゾウムシのふ化・繁殖にとってはいい感じの温度になってしまい、大量繁殖してしまったということだと思います。
白米へのコクゾウムシの繁殖は何度も見たことがあったのですが、玄米にも繁殖するっていうのは、初めて知ったなあ。
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